アンプとエフェクトペダルは、ギターと同様にギターミュージックの不可欠な要素なので、このサイトでのトピックとしてははずせないもの、と思います。といってもギターとは違って私はプロのレベルでそれらを扱っているわけではありません。そもそも私の主な目的は、アンプやペダルがどのように機能し、ギターの元々のトーンにどのような影響を与え、結果としてギター全体としてみた時にプレイヤビリティにどのような影響を与えているのかを理解することでした。
エレクトリック・ギターに触れた最初の頃は、オーバードライブ/ディストーションは真空管アンプとギター自体からのみ得られるものだと私は信じていました。しかし、私自身そうしたセットアップの中で目的のトーンを得る事はほとんど不可能でした。それを解決するために、有名プレイヤーたちがペダルを使って音色を作り上げている様子を観察する中で、私の視点は徐々に変わっていきました。また、チューブスクリーマーやボスOD-1など、後年ミュージック・シーンを変えるほどの影響力のあるペダルが生まれた国で生まれ育ったことも、大きな役割を果たしました。時期的にこうしたプリ・ペダルからポスト・ペダルへ、と日本で最初にペダルが注目されるようになった背景など、ロック・シーンの台頭と合わせて私の経験の一部をお話ししていこう、と思います。
アンプに関しては、私がエレクトリック・ギターを弾き始めた1960年代後半には、歪みを出すことができる即戦力のアンプは存在しませんでした。マスターボリュームの一般化はまだだいぶ先のことです。私の国では当時(おそらく他の国でも)、アンプは歪のないクリーントーンを出すことが本質とされていました。おそらく今でいう楽器としてのギター・アンプという位置づけはなく、ハイファイとしての位置づけだったのだろうと思います。またそもそも輸入品は希少で高価であり、質屋で古いデラックスリバーブやプリンストンリバーブを見つける、というオプションもありませんでした。
ところが当時新譜として私がレコードで聴いた音楽は、歪んだ音やクランチ・トーンがほとんどであり、ソロでは特に長いサスティーン・トーンが重要でした。でもその芳醇ともいえるオーバードライブ・サウンドをどうやって作るのかはわかりません。当時ギターが強くフィーチャーされた「スーパーセッション」というアルバムを聴いていましたが、誰かがアルバムのカバーのマイク・ブルームフィールドの写真をみて彼のレスポールについている黒いスイッチがそのトーンの秘密だと言っていたのを覚えています。もちろん、これは間違いの情報で、実際にはそのスイッチはピックアップ・セレクターだという事が後でわかりましたが。
最終的に、私はエーストーン(ローランド前身で創業者は梯義明氏)が製造したFM-2ファズマスターというファズペダルを購入しました。ただ、このペダルはサステインという意味では期待に応えてくれたのですが、サウンドは鋸波で奇数倍音が多く、コードを弾くのには向きませんでした。ジミ・ヘンドリックスにはほんの少し近づけたものの、残念ながら私のほしかった、滑らかで歌うようなブリティッシュのシンギング・サスティーンを実現することはできなかったのです。
最初のペダルのディストーションがいまいちだったので、私は「あの」音を求めて探求の旅に出る事になりました(前述のように当時、アンプのマスターボリュームコントロール装備は一般的ではありませんでした)。カセットテープレコーダーを分解してむりやりプリアンプとして使うなど、さまざまなアプローチを試したものです。そうするうちにローランドというブランドが出現し、彼らの最初のペダルであるAS-1を発売しました。それはサステイナーと名前だったので期待感いっぱいでもちろんすぐ購入しました。でもこれは実際は今でいうコンプレッサーで私が求めていたオーバードライブではなかったため、バンドのもう一人のギタリストにあげてしまいました。このペダルも今ではヴィンテージアイテムとなっています。